妊婦加算が妊娠税?そんなわけはありません!|医療政策の仕組みについて考える

こんばんわ、9月より妊活をスタートしたMarkey(Markey_PV)です。

最近、突然降って湧いてきたような「妊婦加算」についてTwitter上で避難の嵐が巻き怒っています。

4月改定の診療報酬になのに、この9月に今更どうしたの??
と思ってたのですが、こんな記事まで。

今年から事実上の妊娠税 、突然の妊婦加算に驚きの声!「逆に安くしろよ」「安倍政権何してんの」

この記事・・・一方的な内容でかなり驚かされました。

Markey

えっ・・・そんな見方で大丈夫ですか??

と思ったので、少し日本の医療制度についてお話をしたいと思います。

日本の医療制度をつくる2つの法律

突然ですが。
日本の医療制度は主に次の2つの法律からつくられています。

医療に関する法律

  • 医療法
  • 健康保険法

「医療法」は、
医療の大まかな制度について定めている法律で、
昭和23年に制定されて以来、まだ8回しか改正されていません。

一方、「健康保険法」は、
主に「診療報酬」について定めたもので、
2年に1度のペースで改定されてます。

 

つまり、「医療法」で定められる
医療の根幹に関わるような部分や、大まかな方向性については、
そう大きく頻繁に変わるものではなく、
カメの歩みのようにじっくり堅実に決めていくもので、

世の中の状況やニーズに合わせ、
うさぎのように、素早くスピーディーに対応していかなければならないものを
「健康保険法(診療報酬)」にて定めていると言ってよいでしょう。

診療報酬の仕組みについて

じゃあ、その健康保険法に定められる
診療報酬ってなんなのかというところですが。

そもそも診療報酬とは?

素晴らしいことに日本では国民皆保険制度が整っていて、
(建前上)誰でもどこでも同じ金額で
同じ医療を受けられることになっています。

そして支払う医療費も、私達患者は原則3割の窓口負担で
残りを保険者(国民健康保険や保険協会等)が病院に直接支払う仕組みです。

この保険制度から支払われる料金のことを「診療報酬」といいます。

診療報酬は「◯点」として表されて、これに10を掛けた額が
医療サービスの対価として支払われる医療費となります。

診療報酬の決定

じゃあ、その診療報酬はどうやって決まるの?

まるこ

Markey

診療報酬は通常2年に1回、改定(見直し)されます。

その時々の医療の進歩や世の中の経済状況を見て、
改定率(全体で概ね何%医療費を上げるか、または下げるか)
や個別の医療サービスの評価について
中医協(中央社会保険医療審議会)というところで
喧々諤々議論をし、その答申を経て厚生労働大臣が決定します。

この中医協の議論、
そんじょそこらの会議とはわけが違います。
各分野のトップといえる人達が集結して、
しかも1年かけて、けっこう大掛かりに行われます。

2年に1回の改定なのに、、大変なんだね。

まるこ

診療報酬の概要

「診療報酬=医療サービスを点数化したもの」

と、シンプルな定義ですが、

Markey

内容はかなり膨大です。

大まかにみるとこんな感じですが、
ほぼ全ての医療行為、薬品、材料、処置、検査について点数化されています。

 

おかげで診療報酬改定のたびに
←こんな分厚い点数表が出されます。

中身を見たことある人はわかるでしょうが、
かなり細かくて膨大です。
この本、私はとっても苦手でした。。

 

診療報酬を改定する意義

こんなに事細かく設定された診療報酬を
2年に1回ものペースで、
しかも1年かけて議論してまで改定する意義とはなんでしょうか。

繰り返しになりますが、
世の中の状況やニーズに合わせ、素早くスピーディーに対応していかなければならないものだからです。

そして、もっと言うと

Markey

イチバン効果的な政策誘導の手段でもあります

診療報酬は医療サービスの評価(金額)を点数で示したもの。

つまり、医療政策として、国が
「こういうふうにして欲しい」
と考える医療について点数を上乗せ・加算し
医療機関に積極的に取り組んでもらうというものです。

逆もしかりで、
医療機関がやってきているけど
評価されていない(お金がつかない)サービスについて
正当に評価することでもあります。

いずれにしても、診療報酬を定めることの意義の対象は
医療機関であって、受診する患者ではありません。

あくまでも、
インセンティブをつけることで、
国の進める医療政策に
もっと積極的に取り組んでもらうための仕組みであり、
その対象は「医療機関」なのです。

妊婦加算とは

・・・だいぶ寄り道してしまいました。

本題の「妊婦加算」について説明します。

妊婦加算とは、
先ほどでてきた診療報酬の概要のなかでも基本診療の部分にあたり、
受診した時点で加算される点数です。

具体的には

妊婦加算

  • 病名や診療科にかかわらず、通常の基本診療料(初診料と再診料または外来診療料)に上乗せ
  • 自己負担3割の場合、初診で約230円、再診で約110円増

となります。

「えっ?なんで妊婦だけ??」

という声が聞こえてきそうですが・・・
この「加算」というのは、色々あって。
例えば、時間外に受診したら、その分プラスで加算がかかります。
また、各特定疾患には疾患別の「加算」があります。
年齢や状況によってつく加算としては「乳児医療加算」もあります。

気づいてなかったけど、実は色んな加算があるんだね。

まるこ

妊婦加算の細かい内容については、
丁寧にまとめてあるblogサイトがあったので
こちらを参考にしてみてください。

2018年4月 妊婦加算決定 具体的な内容と現状 私たち一体どうなるの?

妊婦加算は悪なのか

さて、いよいよ本題です。
妊婦加算は悪なのか?!」問題について。

ですが、そのまえに。

「妊婦加算は妊娠税」なわけはない

そもそも診療報酬は医療サービスの対価として支払われるもの。
妊婦さんには特別な配慮が必要であり、その対価として払われるものです。
その意味も、支払う相手も全く別物。
なぜ診療報酬の加算が税に繋がったのか意味不明です。

妊婦加算が創設された背景

先ほどお話したように、
診療報酬は政策誘導なわけで、
「妊婦加算」がつくられたということは、
産科医療の状況が問題になっているわけで、
その対応策としてつくられたはずなのです。

そもそもなぜ妊婦さんだからという理由だけで「加算」がつくことになったのかというと、例えば妊婦さんだと使える薬が限られていますし、起こりうる病気についても特別な知識と配慮を必要とします。簡単に言うと手間がかかるわけです(妊婦さんが悪いという意味ではありません)。そのため、これまでただの風邪や腰痛で内科や整形外科を受診しても「かかりつけの産科に行ってください」と追い返されてしまうことが多かったわけです。

でも、産科医療はすでに崩壊寸前(というか実質は崩壊しています)なので、ほかの科で見れる疾患はできるだけ産科ではなく内科や泌尿器科や整形外科で見てもらった方が助かるのです。そこで、「妊婦さんを見れば追加の料金が発生するよ=収入が増えるよ」というインセンティブをつけることで、なんとか他科の協力を得ようというのが、この「妊婦加算」の一番の意図(だと解釈できる)なのです。「手間賃を増やすから嫌がらずに診てね」という意図なわけです。

産科医療が崩壊してしまえば、困るのは妊婦さん自身です。だから、この加算は妊婦さんの安全を守る場所を守るための加算といえます。

Dr.NAOMIのブログ より一部抜粋)

なるほど、産科医療の現場、
ひいては産科医療に二つの命を預ける妊婦さんが
安心して医療を受け続けられるために
つくられた加算
というわけですね。

Markey

なので、私は妊婦加算は必要な、そしてとても大事な加算だと思っています。

妊婦への負担軽減について

それでも、
「少子化のこのご時世に、妊婦に負担を強いるなんて!」
という声がたくさんありました。

最後にもう一度繰り返します。

診療報酬は、
医療機関に対する医療サービスの評価であって、
あくまでも対象は医療機関です。

少子化対策について論じるのであれば、
診療報酬ではなくて、
出産育児一時金など妊婦さんへの直接の支援を考えるべきです。

(この点について、まだまだ国の政策が不十分だということには
私も異論はありません)

妊婦の負担増を理由に医療機関への負担を求めてはいけません。

産科医療の現場で働く医師や看護師が
どれだけハードでプレッシャーもかかる中
奮闘されているのか。
産科医療が今どれだけ危機的な状況にあるのか。
私はほんの少ししか携わってませんでしたが、
それでもひしひしと危機を感じました。

今回の妊婦加算が、
少しでもその危機的な状況を改善させる呼び水となればと願います。

色々なご意見があるでしょうし、
もしかしたら産科医療に対する別のアプローチもあり得たかもしれません。
ただ、ネット上の一方的な言い分に振り回されず、
しっかりと妊婦加算の意味や背景、
創設された意義を考えていただきたいなと思います。

以上。
これから妊婦になる予定(なりたい!!)のアラフォー女子より
妊婦加算賛成の弁でした。

よりよい医療制度がつくられていくといいね。

まるこ