記念すべき最初のお気に入り本がコレ
原田マハさん作 『本日は、お日柄もよく』
あらすじとしては、
ごくごくフツーのOL 二ノ宮こと葉 が『言葉のプロフェッショナル』久遠久美と出会い、彼女から生み出される言葉の持つ力に魅了されスピーチライターの道に目覚めていくというもの。紡ぎ出されるひとつひとつの言葉、話のストーリー、話し方、そういったものを丹念に磨いていくことで、聞き手の心をつかみ感動をよぶスピーチができあがるんだなと感じることができる本です。
内容としてもモチロンおもしろいのですが、処々で登場するスピーチが秀逸。そして、そのスピーチの極意が、なんと物語の最初に出てきます。
スピーチの極意 十箇条
- スピーチの目指すことろを明確にすること
- エピソード、具体例を盛り込んだ原稿を作り、全文暗記すること
- 力を抜き、心静かに平常心で臨むこと
- タイムキーパーを立てること
- トップバッターとして登場するのは極力避けること
- 聴衆が静かになるのを待って始めること
- しっかりと前を向き、右左を向いて、会場全体を見渡しながら語りかけること
- 言葉はゆっくり、声は腹から出すこと
- 導入部は静かに、徐々に盛り上げ、感動的に締めくくること
- 最後まで、決してなかないこと
伝説のスピーチライダーであり こと葉の師匠の久遠久美はこういいます
静かに静かに始めて、中盤あたりで徐々に盛り上げていく。そして最後に心をつかむ。最初の静かな一言と、最後の情感のこもったフレーズで、徴収の感動の振り幅が決まるの。
ナルホドね、スピーチもオーケストラと一緒、というわけです。観客の心をつかみ、巻き込んで、最後のクライマックスへ向けて一体となっていく。うまくいったときのスピーチの気分は最高!でしょうね。(まだ味わったことないけど)
全て大事なことですが個人的に十箇条のなかでも大切にしたいと思ったのは、
全文暗記すること
これ、努力すればできることですけど、けっこう疎かにされていると思う。(披露宴のスピーチで、原稿読み上げる人、けっこう見かけますよね)
でも、原稿読むのと目をみて話すのでは、相手の受け取り方が全然違いますし、話している本人も、相手の呼吸を見て間を取りながら話ができる。そして、それが次の「力を抜き、心静かに平常心で臨むこと」に繋がるのだと思います。
才能や経験ではなくて努力で差が出るところなのできっちりおさえておきたいポイント。
もうひとつは
聴衆が静かになるのを待って始めること
これはさきほどとは逆にすぐできそうで、実際には恐くてなかなかできなさそうだと思いました。
かの有名なスティーブ・ジョブズ
彼のもスピーチでは間を長くとりますね。初めてジョブズのプレゼンを見た時は「あれ?いつ話し始めるのだろう?」と思ったくらい。それが逆に集中力を高めたりします。
第一声を発するまでの間、第一声を発した後の間。その間を追うごとに集中し前のめりに聞き入ってしまう。まさに、「沈黙」も雄弁な言葉のひとつ、というところでしょうか。
これは、きっと経験を積んで、場の空気を読み取れるようになって活きてくる極意だと思いました。
他にも物語に散りばめられているスピーチの数々を読むだけで、スピーチの「コツ」みたいなものを感じ取ることができます。「披露宴のスピーチ頼まれちゃった」とか「これから仕事でスピーチしなきゃならない」なんてときに、改めて読み返してみたい本です。
最後に、スピーチではないけど、物語中に出てきたこのフレーズをご紹介。
この本を読んだ時、私はとても辛いことがあって落ち込んでいたのですが、そんな私の心に沁みて勇気づけてくれた言葉です。
困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている、三日後の君、歩き出している。
どうだい?そんなに難しいことじゃないだろう?だって人間は、そういうふうにできているんだ。
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